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1993年夏、冷暖房開発1部の山中康司は、猫の手も借りたいような日々を送っていた。カーエアコンの冷媒*1に使われている特定フロン(CFC-12)がオゾン層破壊物質と判明し、91年から94年までに影響が少ない代替フロン(HFC-134a)に切り替えることになったのだが、膨大な車種のモデルチェンジが一巡する間に一気に対応せねばならない。
そんな時期に、同部署の平田敏夫から「おもしろいものがあります」と、ノルウェー工科大学のグスタフ・ローレンツェン教授が著した一遍の論文を見せられた。そこには「環境保護の観点から冷媒には代替フロンより自然冷媒*2の二酸化炭素(CO2)を」という研究が記されていた。そのとき山中は「多忙な時期に、なんと浮世離れした話だ」という程度の感想しか持たなかった。
しかし、平田は論文に共感し、ローレンンツェン教授に手紙を送った。これがきっかけとなり教授との交流が始まる。そして、代替フロンへの切り替えが一段落すると、環境問題に関心の高い欧州の自動車メーカーから「次世代の冷媒をどう考えるのか」構想を示すよう要請があり、にわかに自然冷媒の存在が重みを増した。 |